爆音

taros_magazine2007-01-23

ボロいアパートの一室には、薄い布団に横たわる母親と10代の息子、そして母親の傍らには白衣を着た医師
今まさに末期の瞬間を迎えようとしている母親が、息子に何かを語りかけようと手を伸ばし唇を震わす…
その瞬間、けたたましい爆音をたててアパートの真横を走り去る電車(新幹線?)…再び静寂が訪れたときには、すでに母親は事切れていた…

この随分昔に見た刑事モノのドラマの冒頭シーンを、今日1日で何度も思い出した

この豊橋の海岸線にほど近いところで貨物船が火災を起こしたのは今日の昼
テレビでは5時、6時、7時と、それぞれのニュースで燃えさかる貨物船の映像を映し出していた
そして、そのニュース映像が流される30分ほど前になると、決まってヘリコプターのローター音が頭上を通り過ぎていった

そして午後10時前、まさかと思ったがまたヘリコプターの爆音が響いてきた
その数分後には、誇らしげに”Live”の文字を表示しながら、夕方以降と大して変わらない映像をほんの十数秒映し出していた

火災の状況を見せたいなら、明るい時の撮影したVTRで充分だろう。今の状況を報道したいなら海上保安庁の発表が一番正確だろうし、事実ヘリに乗ったレポーターが語る内容はそれが大半だ

それでも、ヤツらはヘリを出す
もう多くの人が床につく時間だろうと、暗くてよくわからない映像しか撮れなくても…

毎日、毎晩、日本のどこかで繰り返されているだろうこの愚挙…
あの刑事ドラマのワンシーンのようなことが起きていない保障などどこにもない

いや、それより遙かに酷い状況が現実にあったはずじゃなかったのか?

阪神大震災…あの日、取材ヘリの爆音が一体何人の助けを求める声をかき消したのか…


午後11時17分、またヘリの音が近づいてきた