たけし!

taros_magazine2005-04-09


 この人はいつからこんなふうになってしまったんだろう…

 自分が中学から高校生のころ、彼はまぎれもなく”ヒーロー”だった
夜中の2時なんていう時間にラジオでやってるネタを誰もが知ってた。テレビでいきなり全裸になったり、先輩芸人を呼び捨てで罵倒するネタに喝采を送り、お笑いとはまったく関係ない彼の音楽の趣味なんかにまで、自分の同世代の多くが傾倒していた

 やがて彼は”文化人”になった

 自伝的小説がベストセラーとなり、NHKでドラマ化されるようになった。出演した映画はカンヌ映画祭でグランプリ候補にもなり、やがて彼自身が制作した映画が海外で各種の賞を獲得した
 テレビでは政治批判から芸術評までを語ることが許されるポジションとなり、娘の歌手デビューには当代きっての大物ミュージシャンがプロデュースを担当した

 そして彼は”世界のキタノ”になった

 時おりしも空前のお笑いブーム。かつて漫才ブームとともにスターダムを駆け上がった彼が、若手を「ツブす」と宣言して志村けんとタッグを組んだ「たけし☆志村 史上最強の爆笑スペシャル」は、ただただ”哀し”かった

「政治をネタになんてしない。カンタンすぎるから」「お笑い芸人が個人会社を何個も作って、税金対策なんかするようになっちゃオシマイだよ」…すべて彼が漫才ブームの頃に言ったセリフだ
 
 写真は彼の映画”dolls”のワンシーン。屋台に並んだ数多くの風車が回る前を横切る2人…。この映画の中でも評価の高かった印象的なシーンだ

 「たくさん並んだ風車が回ってる前を歩くシーンがあったけど、あんなのは映画をわかってないヤツがやること。”スティール”としてはキレイなシーンなんだろうけど、映画じゃダメだっていうことがわかってないんだよ」

 ほかでもない”北野武”が、桑田佳祐の監督作「稲村ジェーン」を見て当時語ったセリフだ

 今の”たけし”に、あのころの”たけし”は何て言って毒づくのだろうか
 

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