主役

taros_magazine2007-01-08

「日テレ」は大嫌いだが、こと駅伝…つまり箱根駅伝の中継だけは、悔しいが最高に魂がこもっていると思う
過去のデータや映像はもちろん、出場校の所属部員一人ひとりにまで及ぶ入念な事前の取材、そこから引き出したエピソードを披露するタイミング、そしてエンディングに流れる荘厳なメロディと名シーンのプレイバックの見事な融合…それらのレベルの高さは、毎年何千万もの人が2日間のべ12時間ものテレビ中継に釘付けになるという事実が物語っている
日テレによる箱根の完全中継以降、tbsが実業団の『ニューイヤー駅伝』を、テレ朝が『全日本大学駅伝』を、そしてスポーツ中継には絶対の自信を持っているハズのフジが『出雲大学駅伝』というソフトを売り出してはみたものの、レース内容自体に責任はないのだろうが、テレビを通じて見ている側に伝わってくるのは”箱根の劣化コピー”でしかなかった
そんなわけで、この箱根駅伝の中継はもちろん、その後のスポーツニュースや日曜朝のワイド、さらには特別番組までついつい見てしまうのだが…よせばいいのに、日テレはやっぱりやってしまうのである
中継スタッフが正月も棒に振って中継機材を山の上まで泊り込みで運んだとか、アナウンサーが中継方針を巡ってディレクターと口論したとか、そんなコトはテレビのこちら側にはまったく関係のないコトだ
何も箱根駅伝に限らず、日本テレビにはこうした本来”内輪受け”にしかならない企画が大好きな局だ
『視聴率3冠達成!』などと、業界以外には一片の興味も関心もないフレーズをこれ見よがしに連呼したり、スクープや決定的瞬間モノの裏話として、傍から見ればなんでもないカメラマンや記者の普通の仕事ぶりを”冒険活劇”に仕立て上げたりする様をこれまで何度も見てきた
先日、スポーツニュースで特集された箱根駅伝特集でも、優勝した順天堂大学の9区を走った長門選手の襷リレーシーンの後、画面を繰上げスタートを伝えるアナウンサーの姿に切り替えた
そのアナウンサー氏は、繰上げシーンを実況した後に『涙が出てきた…』と言ってハナをすすった。局のカメラが回っているその前で…
おそらく、そのアナウンサーが赤い目を全国に向けて放送するために収録している最中…当日の生中継のカメラには、走り終えた長門が控え室に戻っていく途中で、沿道の年配のファンから月桂樹の冠を手渡されるシーンが映し出されていた
彼はひときわ輝いた笑顔で一礼してそれを受け取り、付き添いの下級生の頭にそっとその冠を載せた…
そのシーンは、アナウンサーの涙声の何万倍も雄弁に箱根駅伝の魅力を伝えてた